集合住宅

蛇の道はheavyだぜ

私の女の子らしさ 女々しさ

以前も述べたように、私は中学生の頃同級生の男子たちが嫌いだった。女子たち以上に陰湿だったし、場所も弁えずに下ネタを話している彼らを低俗だと心から蔑んでいた。
私は男子たちだけでなく、自分の『外』にいる女子たちのことも嫌いだった。
すぐ誰かのことを仲間はずれにしているし、仲直りしたかと思えば今度は違う女子のことを仲間はずれにしているからだ。女子たちは怖いなって他人事のように思っていた。
私は、自分や自分の友達だけを特別だと思い、自分だけが高潔であるように自分の中で仕立てた。私は『女々しい』ものが大嫌いだったし、女々しさを感じるものをすべて排除しにかかった。
『私はクラスの男子よりも女子よりも、もっとずっと高潔だ。自分の友達を仲間はずれにしたりもしないし、陰湿で女々しいことをしない。男よりももっと男前な存在になるんだ』って思っていた。


中学生というのは、誰もが経験する、『誰もが過ぎていく苛烈な時期』なのではないかと思う。自分だけが特別で、異様に他者に厳しく潔癖だったり、子どもの残酷さと大人のずるさをどちらも中途半端に持ち合わせていたり、一番大人に対して反抗的な時期だ。

私の中学時代、クラスはとても荒れていた。あくまで噂で聞いただけだったけれど、ある男子がある男子をいじめて便器に顔突っ込んだとかあったし、女の子はよく誰かをハミ子にしていた。
でも高校生になるとそういった事は落ち着いていった。人を睨み付けて舌打ちばかりしてきた感じの悪い女の子は、高校生になってからは気配りの出来る優しい女の子になっていたし、不良自慢をして悪ぶっていた男の子は、高校生になってからは勉強に励む真面目な男の子になっていた。本当に、誰もが過ぎていく苛烈な時期なのだと思う。


私は問題行動の多い生徒であったが、制服だけは綺麗に着ていた。スカートは膝を覆い隠していたし、校則で髪は切って肩につかないようにするか、結ぶかをしなければいけなかったので、常にショートカットにしていた。

私はスカートを短くしている女の子のことを『子ども』だと思って冷笑していた。

決められていることを破ってスカートを短くすることがお前らのアイデンティティーかよ。ダサッ。皆やってることやってるだけやん。そんなに短いスカート履きたいなら私服でやれよ。もし自分がアルバイトするときに制服を支給されたら、そのスカートはきっと折り曲げたりせえへんねやろ。学校だからって甘えてるんだ。

なによりそのスカートを短くしようとする行為に『女』を感じて気持ち悪く思った。
クラスの女の子たちを見下せば見下すほど私はどんどん女の子らしさから遠くなっていった。一時期は本当に酷かった。所謂中二病というやつだが、人を睨み付ける練習をしてみたり、口調や振る舞いを男のようにしてみたり、一人称が俺だったこともあった。(でもすぐに我に返って1ヶ月ぐらいでやめてた)


スカートを短くしていた彼女たちよりも、彼女たちに対してそんな風に思って、心のなかで干渉していた私の方がよっぽど女々しいやつだったということに気づいたのは、苛烈な中学生を終えてからだった。当時は気づきもしなかったけど、私の方がよっぽど女々しくて卑屈だった。
こっそりマスカラをつけ、シュシュをつけたり、スカートを短くしたりしている彼女らのことを本当はこう思っていた。
『そんなに装飾しといてその程度かよ』って。私が本気出したらきっとお前らより可愛いぞって。その自信はどこからくるのかわからないけどそう思っていた。
本気を出して可愛くしようとしている女の子を見下し、何もしていないのにそんな風に思っている私の方がよっぽどたちが悪いし、よっぽど不純だ。
スカートを短くしたり、可愛くなろうとしている女の子たちの方がよっぽど私よりも素直だった。