集合住宅

蛇の道はheavyだぜ

図書館の記憶 2

学校の図書室は書籍の数も少ないし、小規模だし、借りに来る人も少ない。老朽化した床は歩いているとギシギシと軋むし、市立図書館のような美しさもない。だから入学当初はあまり魅力を感じなかった。しかし高校生になってから、学校の図書室にも魅力を感じるようになった。


学校の図書室の面白いところは、貸し出しカードがあることだ。その本を以前に借りていた人がわかる。


絵が上手で素敵な先輩の名前が、私の借りようとしている本の貸し出しカードにあると嬉しかった。
同じ人が同じ本を何度も借りているのを見ると、『この本はこの人にとって何度も読み返す価値のある本なのだな』と思った。
色々な本の貸し出しカードに名前が載っている読書家の先輩には、勝手に親近感を持った。この人が読んでいる本なら読んでみたいと思って借りることもあった。(でもけしてこの先輩とは一言も話したことがない)
嫌いな先生が私の好きな本を借りているのを見ると、『ああ、こいつ分かってるじゃないか』と上から目線で喜んだりもした。
好きな友達が数年前にその本を借りていたことがわかったりするのも嬉しい。好きな友達に関係するものを見るとパブロフの犬のように、条件反射的に愛しい気持ちがこみあがる。『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』の反対版。


借りた本に自分の名前を書くこともまた面白かった。その名前は書いたあと卒業後も残る。
もし私のように図書館の棚をあさって、誰が読んでいるのか見ているような物好きの後輩がいたら、きっと私の名前を見つけてくれるだろう。そしてその後輩が私に対して何かしらの親近感を持ってくれたら面白いな、なんて思ったのだ。ある種の手紙である。


貸し出しカードに名前がなにも書いていない、まだ誰からも借りられていないまっさらな本も好き。それに名前を書くとき、『一番乗りだー!』と気分が高揚する。欄の一番上に私の名前。次に誰かこの本を借りて名前を書いてくれたらいいなと思う。




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耳をすませば』みたいな私の思い出。

(この記事が私の今年最後の記事です。よいお年を。新年明けましてもよろしくお願いいたします。)