集合住宅

蛇の道はheavyだぜ

成人式に行ってきた 2

流石に市長に物を投げたりだとか、話を聞かずに暴れたりするような人はいなかったが、話の最中にスマホをいじっている女が多く目立ったのには閉口した。
正直市長の話がそう面白くてためになるようには思わないが、その態度はどうなのだろう。ちゃんと聞いているふりだけでもすればいいのに。後ろの花魁ギャルもいちいち煩い。こいつら本当に私と同い年なのかしら。
私は話を聞いているふりをしながら、手話ボランティアの人の手の動きをひたすら見ていた。あの人たちの手の動きが洗練されて見え、面白いと思った。そして、今だけ聴力がなければいいのにと思った。後ろの騒がしい動物の声も聞こえず、静謐な空間のなか手話の意味だけを理解して、この場を過ごせるなら快適だろうななんて。


私の目の前の花魁は、自分の今日の振袖姿の写真を見たり、プリクラの画像をダウンロードしたりしていた。それって今やらなきゃだめなの。そんなに何度も見たって、お前がブスなのは変わらないから安心したらいいのにと心のなかで毒づく。こんなことを言うと失礼かもしれないが、少なくとも数十人以上はいる花魁姿の人のなかに、美人は一人しかいなかった。ほとんどが面白いぐらい露骨なブスだった。

上には上がいるし同様に下には下がいるものだ。私は自分よりも明らかにブスで、さらに気が強くて自分に自信がありそうで、その上趣味が悪い(私視点から)という三つを兼ね揃えたスーパーブスに対して手厳しい。
もし私があなたのような顔に生まれてきたら、そんなに自信をもって生きていけないし、もっと明るいところは歩かずに人目を避けて生活すると思う。その顔で自信をもって生きていけて、そんな悪趣味な格好が出来ちゃうなんて、あなたって幸せね。なんて思ってしまう。
ある種その考えはコンプレックスの裏返しでもあるので、めちゃくちゃ性格が悪い。


式典は思いの外だらだらと長引き終わらなかった。挨拶とビデオレターよりも、実行委員が主催する抽選会によって長引いたように思う。終わったのは四時半ぐらいだったか。

知人以上友達未満の人が連れていた友達…‥という今日知り合った他人以外の何者でもない人から、一緒にプリクラを撮ろうと誘われたのだが、時間の都合上難しいと判断し断った。この後同窓会に出席するし(同窓会は6時半から始まる)、一度戻って服を着替えたり、髪を切る時間が欲しかったからだ。それに、今日初めてあったその子と撮る写真にさほど価値があるように思わなかった。
だから私には、友達は勿論、同じ振袖姿の誰かと一緒に写っている写真が一枚もない。一人で写っている写真と、家族で写っている写真だけ。ちょっと寂しいけど、まあいいか。これがぼっちや!

式典が終わった後は足早に会場を去った。ホール内はだらだらと意味もなく立っている人々が無駄にたくさんいるため、その人たちの間をすり抜けて、なんとか出口を目指す。
彼らは久々に逢った旧友と話を弾ませたり、晴れ姿を写真に収めていた。ああ、この海を割りたい。この時ほどモーゼになりたいと思ったことはない。
私には、ここで話に花を咲かせたい友達も、一緒に写真を撮りたい友達もいない。天人の羽衣を着たかぐや姫が、何の思い煩いもなく月へ帰っていくように、私は足早に去る。
同じように出ていこうとする男性の作った道を、ちょこちょこと付いていって私も通った。


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父の車に乗り込んだら、家の近くの床屋さんに戻り、振袖を脱いだ。持ってきていた服を着て、髪を切ってもらう。一番長いところだと30cmぐらい。一度にこんなに髪を切る人はそういないそうで、理容師さんから『貴重だから切った髪を淡路人形浄瑠璃の団体に寄贈してもいいか』と聞かれた。
私の髪が知らないところで人形になっていると思うと面白い。私の切った髪が無駄にならずに、何かの役に立つのなら嬉しい。使えるだけどんどん貰ってくださいと快諾する。
以前からやりたいと思っていた髪型にしてもらう。父からは真木よう子みたいな髪型だと言われた。真木よう子木村カエラばりに髪型の変化に忙しい人だから、そう言われてもあまりピンと来ない。
私がもともとショートカッ党の人間なのもあって、自分のショートヘア姿をとても気に入っている。でも他の人の反応はどうだろう。ちょっと怖いな。