集合住宅

蛇の道はheavyだぜ

特別な女の子 1

小学六年生の時、私は自らの人生を諦観していた。

保育園の頃、私は早く小学生になりたかった。近くの小学校に通う子どもたちが保育園に訪れて、『小学校は楽しい』と言っていたからだ。私からは彼らが眩しくて、素敵なお兄さんやお姉さんに見え、憧れた。きっと小学校に上がれば今よりも楽しい日々が待っているのだと期待した。

でも実際小学校に上がると、勉強はしなくてはいけないし、とても窮屈な日々が待っていた。大人たちは『もう小学1年生なんだから』と言った。『もう小学2年生』『もう小学3年生』年齢が上がれば上がるほど、あなたはもう幼くなくて、しっかりしなければならない年齢なのだと言われた。

私はもう二度と『まだ』とは言ってもらえないし、私自身もまた自らのことを『まだ』と思うことはないのだ。『あなたはまだ保育園だから』と言って無条件に甘えられた時代は終わったのだと思うと、保育園に戻りたいと思った。

本当に中学生になったら今よりもましな日々が訪れるのだろうか。小学校から逃げるように卒業して中学生になっても、その時には今度はきっと小学校に戻りたいと思っているのだろう。私のこの今は未来の私から見たらましに思えるのだろうか。
高校生になっても、もっと大人になっても、私はずっとそれを繰り返すのだろう。私は一生今に満足することはなくて、過去を美しく思い、未来の方がきっとましだと夢を見る。
小学六年生のくせに、私はこの世界の理を知ってしまったと思った。それに気づいてしまったために、自分の人生にたいして冷ややかな気持ちが生まれる。
中学生になりたくない。止めようがないことだけれど私はそう思った。

(小学校の頃よりも、今の方が甘いものが好きになってより泣き虫になって、中身も色々と子どもっぽくなっているような気がする。)