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集合住宅

蛇の道はheavyだぜ

コンビニ行脚いたずらの旅 2

四件目、ローソン。華やかな20代の女性が私のレジをしていた。毛先にパーマネントのかかったボブカットで、結構可愛い子。横にいる女性店員ともっと話したそうにしていたので、彼女たちは仲がいいのだろうと推測した。

詰め替え用ではない、ちゃんと容器にはいったアタックネオ(筒に近い形状の容器にはいった洗剤)を買う。
四件目で少し学習した私は、二つのテクニックを使う。
『長い方のストローを、お願いします』
あえて『長い』ストローを指定してつけさせる。長い方のストローの長さは、アタックネオの容器の長さに対してとても丁度いい。きっと店員の想像力を掻き立てる(はずだ)。
さらに、店員が袋を用意しようと屈んでいるのを見計らい、『このままで大丈夫です。』と言う。片手でアタックネオとストローを持って去る。まさに今から飲むような雰囲気が出せていたのではないだろうか。

五件目、セブンイレブン。猫缶の他にお酒やらおかずを買って、さもやつまみに猫缶を食べるかのような演出をする買い物をしようかと考えたが、それでは猫缶ではないものにお箸をつけてもらいたがっているように思われてしまうかもしれない。今回は猫缶と犬用のウェットタイプの餌を買う。
レジに持っていき、『お箸をつけてください』と言う。店員は、いくつだろう。20代と言われても40代と言われてもしっくりくるような男性だ。愚鈍な印象を受ける。ポケモンでたとえるなら、カビゴンに似ている。
猫缶とドックフードに箸をつけることに何の疑問も持たないようだった。
私は少し、自分のやっている行動にやけを起こしていた。今こんなに面白い試みをしているのに、どうして誰もこの面白さに気づかないのか。どうして今、あなたの退屈な日常に隠れているささやかな非日常に気づかない。疑わないのだ。
去り際に私が店員に対して言う『ありがとうございました』が萎れていた。


ストローを全然関係ないものにつけろというお客さんはたまにいる。だからその類いだと認識されてしまうのだろうか。それともこの人たちは自分たちの生きる日々に何の疑問も持たず、ただとろんと子豚ちゃんみたいな目をして、自分の決まっている時間が終わるのを待っているだけなのか。きっと私が店員たちに対してそう思ってしまうのは、他でもないこの私がそうだからだろう。ただいたずらにその時間が行き過ぎるのを心を無にして待っている。本当は私こそが愚鈍な店員なのだ。

もしもの話だけど、もし私のレジに洗剤にストローつけてくださいと言ってくる客がいても「お飲みになるんですか?」なんて絶対に心のなかで思っていても聞けない。失礼だし、飲むはずがないから。だからきっと店員さんも、想像力を掻き立てられたとしてもそれを表に出したりはしないだろう。その上で私が満足のいく答えを出すとしたら、結果的に自己満足以外何もないのである。

この旅には終わりがないかもしれない。私が望む結末はどこにもないかもしれない。それでも私は次のコンビニを目指すのだ。



六件目、駅の近くのファミリーマート。一見客が多く見えるが特にレジ周辺は混雑しているわけではなく、立ち読みをしているお客さんが多い印象を受けた。レジが混んでいたり忙しいと気づいてもらえない可能性が高いため、安堵する。
店内を物色する。まず猫缶を一つ手にとった後、「何にストローをつけてもらおうか・・・」と考える。ちゃんと長い方のストローで飲むのに丁度いい形状の容器にはいっているものを探す。もう洗剤はさっき買ったからいらない。違うものがいい。もうすぐサラダ油が切れそうだし、サラダ油にストローを付けてもらおう。
レジへ1リットルのサラダ油と猫缶を持っていく。店員さんは30代後半の女性。ファミリーマートの場合、名札に星がついていて1つ星から5つ星まである。星が多ければ多いほどスキルが高い、ということになっているらしい。彼女の名札の星は2つ星だった。
「おはしとストロー、あっ長い方のストローをつけてください」と言う。そしてさらに店員が屈んで袋を出そうとするときを見計らって「あっ、すぐ使うんでこのままで大丈夫です」と言った。四件目のローソンでのテクニックを使ったのだが、ただそこに「すぐ使う」というワードを入れた。えっこの人サラダ油をすぐ使うの?袋いらないの?それに長い方のストローってもしかして・・・と思わせるためだ。けして「すぐ食べるので」とか「すぐ飲むので」という単語を使ってはいけない。あくまで私の目的は店員の想像力を掻き立てさせることなので、そんな直接的な言葉を使ってしまうのは美学に反してしまうのだ。
店員は面食らったようで「えっ、このままでよろしいんですか・・・」と言っていた。その声には困惑の色があった。
私はその店員の反応を見て、勝利を確信した。にやけてしまいそうになる顔を抑えて「はい、大丈夫です」と答える。
pontaカードを提示した後お会計をする。猫缶とサラダ油を持って店の外にでるのだが、そしてここでも私は小細工をした。
猫缶と割り箸は持ってきていた手提げかばんの中に入れ、サラダ油は両手に抱えて持つ。ストローを一緒にかばんに入れてしまわずに、そのストローとサラダ油には関係性があるのだと主張するために、サラダ油の容器の側面に沿わせるかのようにストローを持った。「ありがとうございました」と明るい声を作って微笑む。
出来た。私はきっとこの店員さんに「サラダ油を飲む女」だと思わせられた。そんなのどこでわかるのって話だし、ただ自分のそのとっさの演技力に酔っているだけなのかもしれない。でも、私はひとつ、達成したのだ。






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サラダ油とストロー。ちゃんと長い方のストローに対して絶妙な大きさである。



自転車のかごには猫缶と生活用品でいっぱいになっている。ここまでで買ったもの、サラダ油1リットルとアタックNEOの洗剤、詰め替えパックの柔軟剤、猫缶が5個とドックフードが一つ。





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私、ノリで買っちゃったけど猫も犬も飼ってないんだよね。どうしようか。