集合住宅

蛇の道はheavyだぜ

こんな形での帰省

B兄ちゃんと車に乗って、祖父母の家へ向かった。
B兄ちゃんと顔を合わせるのは三年ぶりだった。
私が小さかった頃はお盆やお正月にみんなでマリオパーティーやったり、スマブラやったり、卓球やったりなんかしたけれど、大きくなると皆島の外を出ていき、交流を持たなくなったのだ。

祖父が亡くなったことに全然実感がないんだ、と口にすると自分もそうだとB兄は同意した。
『でも淡路に帰ればきっと現実が待ってるんやろうなあ』
『そう思うと帰りたくないよな』
なんて車内で話していたのを覚えている。

祖父母の家は山の奥にあり、奥の方の道はとても狭い。上の方はもう車で溢れているらしいので、少し広い道で車を停めてそこから歩いて登った。その道中で私の母に遭遇した。B兄・私・母の三人で一緒に登っていく。

『おじいちゃんの顔、見てあげて。おじいちゃんね、凄く綺麗だよ。まるで眠っていて、今にも起きてきそうな感じがするの。』
母の声は少し震えていた気がする。

転落したトラクターはそのまま痛々しく残っていた。既に警察により調べられ「事件性はない」と結論付いているので、動かしても問題ないのだが、トラクターを人力でどかすことが不可能なためしばらくはそのまま放置するしかないらしい。

祖父の家には、祖母・伯父・伯母・父・叔父・叔母・叔母の息子・A兄・A兄嫁が勢揃いしていた。
お葬式の日まで灯火を消してはいけないために、皆火を見張って夜通し起きていたらしい。掃除をしたり、準備をしたり大変だったようだ。

父からお前はキーボードを打つのが早いだろう、仕事を与えると言って
『焼香リスト』の制作に任命された。
葬儀会社の人が血縁の濃い順に名前を呼び、呼ばれた者から焼香をしていく。それに必要なものらしい。伯父の家のパソコンを借り、Excelを立ち上げ、番号と名前とふりがなを入力する。

『止め焼香?ねえお父さんこの人誰?』
『この人はおじいちゃんの弟だよ。止め焼香は一番最初にお焼香をあげる人。(喪主→親族→一般参加者→止め焼香)
おじいちゃんの兄弟がやることがいいとされているんだ。』

私は祖父に弟がいることをその日まで知らなかったので驚いた。祖父は五人兄弟の次男で、三男と末っ子の妹は今もご存命らしい。

焼香リストの真ん中より下は、全然知らない名前の人ばかりだった。特に祖父母の親族や伯母の親族などは全然わからない。
人の名前の読みは意外と難しい。ちくいち父や伯父に読み方を確認しながら作業する。
親族の焼香リストができたら、今度は来賓の焼香リストも作る。そしてプリントアウト。

お葬式において面白いと(面白いという言葉は不適切か)思ったのが、葬儀会社からマニュアルが渡されることだ。
喪主の挨拶の例文や、お供え物や棺の値段、用意するものなどがわかりやすく記されていた。最近は何にでもマニュアルがあるらしい。