集合住宅

蛇の道はheavyだぜ

雨の花

雨の日は頭上に花が咲く。
24本の骨を持つ私の傘を開いた時、頭上にまるで乱菊の花が咲いているように感じる。緋色の傘から透過するわずかばかりの光は、まるで絹ごしされたかのように柔らかい。
私は頭上を眺めながら歩く。そうしていると、緋色に包まれているかのような錯覚に陥り、私の心に朗らかさを与える。






雨の日は空も曇り、見えるもの全てが暗くくすんでいるかのように思われる。アスファルトも、建物も、皆どこか雨の日の鬱屈とした気持ちを隠しきれずに顔に出してしまっているかのような、そんな薄暗さを感じさせる。

そんな世界の中で私が緋色の花を開かせたら、一つ、鮮やかな色が足されるように思う。これは嗜好の問題であるが、傘は鮮やかな色の方が美しい。雨の日の色調の中で、私の傘の色だけが映える。色が映えるという感覚には心躍るものがあり、えもいわれぬ興奮を私にもたらす。
しっとりと雨に濡れた緋色の傘はより深い赤色になり、それら風景のどんな色よりも鮮やかに、雨の世界を彩る。
雨の日はそのような嫌になるくらいポエミーな事を考えても、多少は許されるように思うのだ。